ポーク・ビンダルーは、インドの西海岸の南方に位置するゴア地方に伝わる地域限定の名物料理です。インドにはヒンドゥー教徒のように牛肉や豚肉を食べられない人が多いにも関わらず、豚肉を使う料理が名物になったのには歴史的背景があるようです。大航海時代の最中、1498年にヴァスコ・ダ・ガマがリスボンから西アフリカを経由してインドを目指して出港。結果、カリカット(現在のコージコーデ)に到達し祖国にスパイスや宝石を積んで帰港したことでポルトガルによるインド進出が本格化しました。1510年にはアフォンソ・デ・アルブケルケが艦隊を率いてゴアを攻略し、アラビア商人たちを抑えてゴアとセイロン島におけるスパイスの貿易権を獲得。これによってゴアはリスボンを模した建物や教会が建てられていき、スパイス貿易の拠点になりました。
ポルトガルによるスパイスの独占貿易は17世紀まで続き、リスボンを拠点に東アジアに領地を拡大していきました。この領地拡大に欠かせなかったのがキリスト教の布教です。フランシスコ・ザビエルもその一人です。ポルトガル国王ジョアン3世に要請されて1542年にリスボンに赴きインドの文化や習慣を尊重しつつ改宗を促してきました。
ポルトガル人が昔からキリスト教への改宗を促す際に用いた有効な手段に「美味しい食べ物」と「宗教的な禁忌」がありました。レコンキスタによって1143年にポルトガル王国が成立した後に、ユダヤ人やムーア人たちを強制的にキリスト教に改宗させるだけでなく、教会でユダヤ教やイスラム教で禁忌とされている貝類や豚肉を使った料理を振る舞ったという説もあり、その代表格が豚肉とアサリのアレンテージョ(Carne de Porco à Alentejana)といわれています。キリスト教徒になれば今まで守らなければならなかった戒律を気にせず空腹を満たせるというわけです。
ポーク・ビンダルーもポルトガルのカルネ・デ・ヴィニョ・エ・アリョス(Carne de Vinho e Alhos)という料理がルーツとされています。カルネは肉を、ヴィニョはワイン、アリョスはニンニクを指す単語です。ヒンドゥー教では豚肉は殆ど食べられずニンニクは禁忌です。マリネした豚肉に火を通して壺に入れラードなどで密閉することで長期間日持ちさせられるようになり、水の替わりに白ワインで煮込んで作るこの料理は大航海時代に船内でも食べられていたのかもしれません。
これが、インドに伝わりキリスト教の布教と共に現地の人々の好みにあうよう変化し、ヴィニョ・エ・アリョスが訛ってヴィンダルーと呼ばれるようになったようです。
- グリル用ポーク肩ロース
- 500g
- Ⓐ コリアンダー(パウダー)
- 3g
- Ⓐ シナモン(パウダー)
- 3g
- Ⓐ クミン(パウダー)
- 2g
- Ⓐ ガラムマサラ
- 2g
- Ⓐ ターメリック(パウダー)
- 2g
- Ⓐ ニンニク(すりおろし)
- 5g
- Ⓐ ショウガ(すりおろし)
- 5g
- Ⓑ チリパウダー
- 5g
- Ⓑ クローブ(パウダー)
- 5g
- Ⓑ シナモン(パウダー)
- 2g
- Ⓑ 黒コショウ(パウダー)
- 3g
- Ⓑ クミン(パウダー)
- 2g
- Ⓑ サラダオイル
- 60㏄
- ニンニク(みじん切り)
- 8g
- パプリカパウダー
- 12g
- 赤ワインビネガー
- 50㏄
- サラダオイル
- 60㏄
- タマネギ(みじん切り)
- 360g
- トマト(粗みじん切り)
- 240g
- 食塩
- 適量
- 水
- 300㏄
- 上白糖
- 3g
- バスマティライス(生米)
- 300g
- ダニヤー(パクチー)
- 適量
- バスマティライスを炊く。(洗米後、15分程度水に浸漬してから厚手の鍋に沸かした3ℓのお湯で6分ほど茹で芯がなくなったらザルに空け、鍋に戻してフタをして20分ほど蒸らす。)
- グリル用ポーク肩ロースを2㎝にスライスしてから4等分に切り、ⓐを全体に擦り込み1時間馴染ませる。
- 鍋にⒷの材料を入れ、全体が黒っぽくなるまで弱火で加熱する。
- ③の鍋にニンニクを加えて薄く色づいたら、パプリカパウダーを加えて混ぜ合わせて火を止める。
- 赤ワインビネガーを加えて滑らかなペースト状にする。
- 別の鍋にサラダオイルを入れて弱火にかけ、タマネギと塩を入れて軽く色づくまで炒める。
- ⑥にトマトを加えて更に炒め、水気がなくなるまで炒め合わせる。
- ②の肉を加えて炒め合わせ粉っぽさがなくなったら砂糖と⑤のペースト、水を加えて10~15分程度煮込む。
- 塩で味を調える。
- バスマティライスを皿に盛り付けてから、ポークビンダルーを掛け、ダニヤー(パクチー)を添える。
現在ポルトガルに伝わっているカルネ・デ・ヴィニョ・エ・アリョスは、豚肉を白ワインやワインビネガー、ニンニク、ローリエ、クローブ、セイボリー、マジョラム、塩コショウなどで一晩マリネしてから肉を焼き、漬け汁で煮込むというものです。ポルトガルに元々あった素材や地中海沿岸地域から伝わったハーブも使いますが、特にポルトガル人が取引を管理したクローブやヴェニスの独占貿易を崩すきっかけになったコショウなどを入れるところはスパイス貿易の歴史を感じるところです。
また、この料理が航海でも食べられたのだろう感じるのは、使うハーブやスパイスに様々な効果が期待できるところです。例えばニンニクは滋養強壮、クローブや防腐・鎮痛効果、セイボリーは防腐作用と消化促進効果、黒コショウは防腐・抗菌・便秘、マジョラムは解毒・鎮静・食欲促進・船酔い防止などが挙げられます。
航海には水分が少なくて堅いビスケット(2度焼きしたパンという意)を積み込みました。長期間常温保存可能なビスケットを美味しく食べるためにはソースに浸して柔らかくするしかありません。水を使わずに仕上げられ、健康を保つことができて美味しい料理がインドに上陸したことで、キリスト教の布教にも使えるよう現地流にアレンジされたと考えると腑に落ちますね。
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